彼の名は、不動修羅。 東京は高円寺に事務所を持ち、業界唯一の、猟奇事件のエキスパートを自称する私立探偵。 しかし実際は低級な動物霊や邪霊が引き起こす事件の調査解決を中心に、金次第でどんなつまらぬ仕事もする拝み屋同然の貧乏探偵である。 |
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今日、修羅は中央線にゆられて八王子へ向かっていた。 修羅の師匠であり親代わりでもある八王子の古寺、不動院の和尚に呼び出されたのだ。 和尚に呼び出された時は大体、長い説教を聞かされると相場が決まっている。 かと言って、すっぽかしたりすればそれこそ後がこわい。 修羅:どっちにしてもユウウツだなあ。 そんな修羅の心とはまったく無関係に、八王子を目指して電車は快調に走っていた。 |
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和尚:全く、いつまでフラフラしとるんじゃ。探偵だとか申しても、やっとる事は拝み屋と変わらんはないか。ワシはお前を拝み屋なんぞにするために、密法を教えたのではないぞ。! 修羅:あの、お説教はまた今度ゆっくりと・・・今忙しくて。 和尚:嘘ツケ、どうせヒマを持て余しとったんじゃろうが。 修羅:あ、いえ・・・ 。 和尚:ま、よいわ。今日は説教のために呼んだわけではない。ひとつ、お前に仕事をしてもらおうかと思って呼んだのじゃ。 修羅:はぁ?お師匠が俺に仕事を? 和尚:そうじゃ。さ、郷田警部、こちらへ。 |
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和尚は一人の人物を招いて、修羅に紹介した。 和尚:こちらは郷田警部。警視庁のお方じゃ。 修羅:はぁ・・・警視庁ですか。お師匠、何か悪いことでも? 和尚:ばかもの!このお方はお前に仕事を持ってきて下さったんじゃ。 警部:郷田です。よろしくお願いいたします。 修羅:はぁ、こちらこそ・・・。 郷田警部。本庁勤めの刑事さんである。 彼の話と言うのは、最近西日本の2ケ所で起きた奇怪な大量変死事件、それもどうやら化物が絡んでいるらしい事件について、修羅に調査を依頼したいということだった。 |
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修羅:しかしまた、何で警察が俺なんかに? 警部:はぁ、お恥ずかしい話ですが、我々には理解できないことが多すぎまして・・・。そこで、こちらのご住職にお頼みしてあなたをご紹介していただいたわけです。 修羅:はぁ、なるほど。で、報酬の方は? 警部:200万でどうでしょうか?もちろん必要経費は別料金で。 修羅:に、200万! |
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修羅:わ、分かりました。お引受けいたしましょう。この事件こそ、私が長い間待ち望んでいた事件です。私の正義と平和を愛する心がそう命ずるのです!やります。いや、やらせてください! 警部:で、では後日私のところへ来てください。詳しい話はそのときに。 修羅:はいっ!200万の・・いや正義と平和のためがんばらせていただきます! ・・・かくして、修羅の孤独で危険な調査は始まったのである? |